法人の目的


法人の目的

 当法人は、「ワークルール教育」の実現・支援に関する事業を通じて、労働者自身が「ワークルール」を理解し、勤労意欲や職場定着率を高め、確かな職業生活を基盤とした市民活動を営むことによって、社会の福祉の向上に寄与することを目的としています。

 この目的のため、次のような活動を展開して参ります。
  1. 学校におけるワークルール教育のための専門家の派遣
  2. ワークルール教育を行う専門家のネットワークの形成や人材データの作成
  3. ワークルール教育や労働教育のための資料やテキストの作成及び調査研究
  4. ワークルール教育の担い手の教育及び研修
  5. 労働に関する相談

特定非営利活動法人・職場の権利教育ネットワーク設立趣意書

 「パートにも年休があるのですか」、「就業規則を社内秘だといって見せてくれないのですけど」。

 景気の回復期とはいえ、若年者の就労環境は改善していない。勤労意欲の減退も顕著である。若年者ばかりでなく、労働者の平均賃金は減少傾向にあり、非正規労働者の割合も増加している。社会全体として明確な格差が生じている。社会的格差は常にあったが、現在のそれは、自己責任の結果として格差を好ましいとする点に特徴がある。

 このような状況に対し、勤労意欲の向上等のために学校教育において「生きる力」の獲得やキャリア教育が試みられている。最近は、主に格差是正の観点から、政府の政策として「再チャレンジ」も強調されている。たしかに、仕事をする能力の教育や格差の是正はは必要である。しかし、仕事や労働に関する意欲や能力の獲得だけを重視するだけでは、確かな労働生活の実現は困難といえる。ライフ・ワークのバランスや職場において尊厳を守るためにも労働の担い手の権利を実現することが不可欠である。

 この権利は、労働条件については主に労働基準法によって、労働条件決定の担い手たる労働組合の結成・運営については労働組合法によって具体化されている。さらに、雇用保障、職場における労働者の人格権やプライヴァシーについては主に裁判例によって保護され、全体としてワークルールを支える労働法体系が形成されている。

 では、このような労働法体系につき実際にどのように教育がなされているか。その一は、学校教育のレベルであり、特に、高校の公民においてなされている。教科科目以外では、総合学習や進路指導でも取り上げられることがある。その二は、職業教育のレベルであり、主に職業高校・専門学校等において学校教育の一環として学ばれている。その三は、就職した後の社員教育・組合員教育のレベルである。その四は、大学教育のレベルであり、労働法の体系的教育がなされ、専門基礎的な側面と働く市民向けという 2 つの側面がある。その五は、専門家教育のレベルであり、大学院教育が中心となる。弁護士や労働法に関連するパラリーガル、さらに研究者を養成する教育である。

 職場においても自己責任が強く要請されているにもかかわらず、自分(達)を守るために労働法の知識を獲得すべきであるという社会的要請はあまりない。実際にも学校教育や社会教育において、十分な教育はなされていないばかりか、そのような教育をすべきであるという問題関心にさえ欠ける。最近では、むしろ権利主張を行う人間を、協調性がないとして排除する危い傾向さえみられる。労働組合を作るなんてもってのほかということになる。

 一方、若年者の失業率の上昇やフリーター化、さらにニートの出現に関しては社会的に大きな注目を浴び、キャリア形成のために学校教育や雇用促進施策につき多様な試みがなされている。たしかに勤労意欲の涵養やキャリア形成の必要性は否定しがたい。しかし、職場における権利やワークルールを全く無視して勤労意欲の側面だけが強調されることはやはり異常である。職場において権利が守られるということは「働くこと」の前提であり、営々と築き上げられてきた「文化」に他ならないからである。また、生きる力は、職業能力だけではなく、権利主張をする知識と気構えをも含むものと思われる。この権利保障は、とりわけ若年者について、勤労意欲の向上に役立つばかりでなく、職場の風通しをよくすることによって経営効率や職場定着率をも高めることも期待される。同時にこのような権利教育は、民主主義の担い手を養成するという市民教育でもあることも強調したい。

 そこで、本法人においては、「ワークルール教育」の実現・支援に向けた次の事業を行う事によって、労働者自身が「ワークルール」を理解し、勤労意欲や職場定着率を高め、たしかな職業生活を基盤とした市民生活を営み、社会全体の福祉の向上を目指すこととする。

  1. 学校におけるワークルール教育のために専門家を派遣すること。そのために専門家のネットワークを形成するとともに、人材のデータを作成すること。
  2. ワークルール教育や労働教育のための資料やテキストを作成すること。そのために必要な調査・研究をすること。
  3. ワークルール教育の担い手の教育・研修を行うこと。
  4. 労働に関する相談を行うこと。

 申請にいたるまでの経過

 将来に向けて継続的かつ安定的に活動していくため、また活動に対する社会的な信用を得るため、特定非営利活動法人を設立することとし、2007 年 2 月 5 日、「NPO 法人 職場の権利教育ネットワーク」設立発起人会で、総会で検討すべき課題等を整理し、2007 年 4 月 19 日、設立総会を開催した。

2007 年 4 月 19 日
   特定非営利活動法人 職場の権利教育ネットワーク

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